現在の日本の着物は、大きく「染めの着物」「織りの着物」の2つに分けられます。
 

このうち、振袖や留袖などの礼装に用いる着物は前者、紬や絣などの普段着が後者になります。生地による用途の区別は厳格なもので、どれほど高価な紬でも礼装に用いられることはありません。
 

それは、2つの生地の成り立ちのちがいによります。紬とは本来、生糸を取る生繭の規格から外れたくず繭などで真綿を作り、そこから手で紡いだ紬糸を先染めして織った織物。一方、選ばれた生繭は生糸となり、白生地に織られ、職人の手によってさまざまな「染めの着物」に仕上げられます。
 

例えると、紬はその土地その土地の土で焼かれた素朴な焼き物で、白生地を美しく染め、精緻な文様が施される振袖や留袖は、華やかな絵付けをされた高価な磁器のような存在なのです。
 
 

しかし大量生産の時代になると、一部でその価値も逆転。白生地への柄付けも機械プリントが可能になり、必ずしも染めの着物=高級品であるとは言えなくなりました。
 

逆に、紬は織り手も減り、貴重な存在になった頃、手仕事の美しさが再評価されることに。とりわけ、大島紬が産業として発展する過程で紬糸の使用をやめたのとは対照的に、産業と並行して手仕事の伝統も守り続けた結城紬は、1956年に重要無形文化財の指定を受け、2010年にはユネスコの無形文化遺産にも決定。日本を代表する織物として、存在価値を高めています。
 

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時を経るにつれ柔らかさを増す肌ざわり、三代持つという強い打込みによる堅牢性、紬糸が織りなす陰影の深い味わい。結城紬を代表とする伝統的な紬という織物に宿る「用・強・美」は、日本人の奥深くに脈々と流れる精神を映したものといえるかもしれません。
 
 
 

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